ダブルインカム トリプルキッズ blog

夫婦共働きの子育てを実践しながら、パパ育児の苦労と楽しさをご紹介します。

423.つくば市のスマートシティ構想について考える  その5・スマートシティ政策者が陥る迷宮

おさらいですが、その1ではつくば市の都市計画の課題をまとめました。

 

その2では世界のスマートシティの方向性(中国、アメリカ、欧州日本)を記載しています。

 

その3ではスマートシティってどんなことをやるの?という例を挙げ、その4では施策を実行する上でのインターフェイスとなるアプリについて、スーパーアプリとローカルアプリの違いを紹介しました。

 

 

doubleincome-triplekids.hatenablog.com

 

 

 

本日のテーマは『スマートシティ政策者が陥る迷宮』について

 

まずつくば市のスマートシティ政策における体制を確認します。

 

つくば市にはかなりの知識人が揃っておりスマートシティ化に向けたプログラムが策定されています。

スマートシティ/つくば市公式ウェブサイト

 

また、スマートシティづくりのKPIなども設定されています。

https://www.pref.ibaraki.jp/sangyo/kagaku/kenkyu/documents/gaiyo.pdf

 

さらには、スマートシティに向けた倫理原則も設けられています。

つくばスマートシティ倫理原則/つくば市公式ウェブサイト

 

参加されている企業も、地方都市が良くこれだけ揃えたな・・・という感じ。

https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/17/20230228_member.pdf

 

 

 

さてそれでは、ここまで行政と民間企業が進めている『スマートシティ』のとりくみについて、つくば市民はどれくらい認知しているでしょうか・・・。

 

「その1」でも書いたように、つくば市は市民に占める『意識高い系住民』が他の都市よりも非常に多い。

 

けれども、TXのつくば駅で「スマートシティって何ですか?」って聞いて、まともな回答を出来る人が何人いるでしょうか・・・。

 

自分も含めてそうなのですが、国が旗を振り、予算をジャンジャンつけて、地方自治体が手を上げ、民間企業(ほとんど東京資本)に発注しまくっているこのアプリ、このシステム、いったいどれだけの市民が理解しているでしょうか・・・。

 

本来スマートシティは「その2」で記載した通り、Society5.0の定義によれば、「市民が主役」であるはずなのです。

 

しかし、スマートシティづくりのプロジェクトが進む中でも市民への浸透はイマイチ。

 

「その3」で紹介したような「スマートシティ施策のインターフェイスアプリできましたよ!(東京の大企業がシステム開発しました!みたいな)」と流しても、どれだけの市民がスマホの優先度の高い画面にアプリをダウンロードして配置してくれるのか・・・。

 

これが「その4」で記載したローカルアプリの辛さです。

 

www.city.tsukuba.lg.jp

 

 

 

行政と民間技術者で「こうしよう」「これがいいはずだ」とやっていると先日の日経新聞一面のように「使われないICT」「実証実験止まりのICT」で終わってしまうことが多くなる。

 

ローカルアプリのダウンロード数が増えず、費用対効果が得られないため、翌年度の行政予算がつかず、継続されずにボツとなる。

 

www.nikkei.com

 

 

さあいよいよ迷宮の始まりです。

 

そこからの反省を活かしてスマートシティ政策の検討者は「ペルソナを考えよう」「ユーザーエクスペリエンスを考えよう」となるわけですが、どうしても検討している人たちが偏り過ぎている。政策を考えている人たちはみんな頭が良すぎる。みんな時間価値の高い人たちの集合体で、多様性がまったくない。

 

つくば市の役員体制を見てください。ここも明らかに偏っている。

https://www.city.tsukuba.lg.jp/material/files/group/17/230301_yakuin.pdf

 

私が通ったスマートシティスクールの学生同士の悩みもまさにそこで、スマートシティを考えている人たちが偏りまくっているんです。

 

授業で先生から投げ掛けられた「スマートシティはエリート市民のためにあるのですか?」という問いが突き刺さってくる。

 

 

 

スマートシティを構築して幸福度を最大化させたい『市民』は、年齢も所得水準も業種も多様なのに、スマートシティを考えているメンバーは『市民』の多様性を代表する構成になっていない・・・。

 

年齢は労働年齢人口に偏っているし、所得水準は極めて高く、総じて高学歴。

 

こんな偏った集団で考えたスマートシティのモデルに対して、一般市民の深い理解と参加意思、個人情報提供に至るまでの受容は生まれるでしょうか・・・。

 

 

 

スマートシティの構築のためには、どうしてもデータ連携が必要です。

 

データ連携のためには、市民のデータを取得し、紐づける(名寄せする)ことに対する、市民の理解、市民の受容が必須です。

 

しかし、これだけ偏ったメンバーで考えた都市サービスが、本当に大多数の市民に役立つサービスとなるのか・・・。市民が「このサービスが得られるのであれば自分の情報を共有しても良い」と思えるほどの市民理解を得られる内容となるか。

 

 

 

「市民が本当に欲しているもの」これが分かれば、民間のベンダーやデベロッパー、行政も苦労しない訳ですが、それが分からない。

 

わざわざローカルアプリをダウンロードし、アプリをタッチして、アプリを操作してまで毎日欲しくなるような情報を提供できる市民サービス、都市サービスなんてあるのか?

 

これが見えてこない。

 

もしこれが分かっているのであれば、貴方はスティーブ・ジョブズになれます。潜在需要を理解する天才です。

 

今すぐにでも起業できる。

 

 

 

でもそれは分からない。今のところ誰も。

 

日本の最高学府、東京大学でもわかっていない。

 

日本の超一流デベロッパ三井不動産でも見えていない。

 

国家並みの予算を持つ地方自治体、東京都でも良案無し。

 

 

 

これが日本のスマートシティ構想の迷宮です。

 

 

 

今回もここまでの長文をお読みいただきありがとうございました。

 

次回は迷宮から脱出する試みを紹介します。

 

【『未来を語ろう』というグループを立ち上げてみました。皆さんのご参加をお待ちしております。】

 

以上