ダブルインカム トリプルキッズ blog

夫婦共働きの子育てを実践しながら、パパ育児の苦労と楽しさをご紹介します。

426.つくば市のスマートシティ構想について考える  その7・必要なのは信頼で結ばれているコミュニティ

 前回、「その6」では、スマートシティが提供すべきサービスが見つけられない。という話と、潜在需要を見える化するためには市民のデータ提供が必要だが、市民の同意が得られない。という状況をご説明しました。

 

doubleincome-triplekids.hatenablog.com

 

 

 費用対効果が期待できるサービスを見つけ出したい。

 

 そのために、人々が街をどう利用しているのか、移動データや購買データなどを取得して分析したい。

 

 どうすれば人々のデータを集めることができるか。名寄せすることができるか。

 

 

 

 まず、日本においても自分の所有権の及ぶ範囲(敷地内、建物内)であれば、所有物を貸す相手方に対して個人情報収集に関する事前承諾を得ることは一定可能です。

 

 例えば、六本木ヒルズの敷地内において、監視カメラでデータを取っていることなどを表示すれば、人々が敷地内をどのように移動して、どこが何時に混むか、などを分析できます。

 

 また、六本木ヒルズのポイントカードからは、どういった属性の人が、いつどの店舗を利用しているか、どんなものを購買しているかのデータが手に入ります。

 

 このように自分の所有権が及ぶ敷地内においては、ある程度のデータ取得が可能です。

 

 

 

 ただ、「スマートシティ」という以上、自分の所有権の及ぶ敷地内だけで何かやっていても広がりを見せず、どうしても公共空間にまでサービスを広げられるように設計したい。

 

 道路空間や公園などにAIカメラなどを設置して、人々が街をどう使っているか観測するためにはどうすればよいか。

 

 そのためには市民の理解を得る必要があります。

 

 このステップでコケたのは、サイドウォークラボ(グーグル)が主導したトロントの事例です。

 

グーグルがトロントで夢見た「未来都市」の挫折が意味すること | WIRED.jp

 

 

 いくらデジタルの専門家が主導しても、市民の同意を得ることはなかなか難しいです。

 

 「便利になる」という側面と「監視されている」という心理負担がどうしてもセットになってしまうからです。

 

 さらにいえば、「便利になる」という意味が「人とのコミュニケーションが増える」という意味なら受け入れる人が多くいると思いますが、「時短になる」という意味だとするならばさらに市民受容は得られないでしょう。

 

 

 どうすれば市民が自らデータを提供してくれる状況を作れるのか

 

 市民の理解を得るためには、市民が自ら参加し、市民が本当に欲しいと思う公共サービスをみんなで考え、それをプロジェクト化し、そのプロジェクトの実現のためにはどんなスマート技術が役立つかをベンダー側が考える。というプロセスがあるべき姿ではないか。と考えてるようになりました。

 

 専門家が考えて市民に与えるというスタイルではなく、市民が長い時間をかけて自ら考えることが必要。

 

 大変急がば回れ。のプロセスですが、市民が自ら「課題を考えるコミュニティ」を作り、「どのデータが揃えば課題に対する答えが見えてくるか」「そのデータを自分たちは提供してよいと考えるか」これらをみんなで考える。そして、「やってみよう!」という機運を自分たちで作り上げる。

 

 このプロセスがないと、日本やヨーロッパではスマートシティはつくれないと思います。

 

 結論

 スマートシティを構築することを考えるならば、まず、信頼に基づいた市民のコミュニティづくりを行い、そのコミュニティの中で街の課題を抽出し、そのコミュニティに属する人たちが自らのパーソナルデータ(移動履歴・購買履歴・健康履歴・他)を持ち寄って分析することから始まる。

 

 そこで、その他の市民に対しても説明しうる有意なサービスモデルが構築できれば、コミュニティが説明者となって、コミュニティ外の市民に対して参加を呼び掛ける。

 

 その繰り返しによって、最後はある範囲で通用するようなスマートシティサービスにまで成長させることができる。

 

 何よりも大切なのは、「この人であれば」「この組織であれば」「このプロジェクトであれば」自分のデータを提供しても良いと思える、堅固な信頼関係で結ばれているローカルコミュニティを作り上げることです。

 

 スマートシティを掲げる割に、もっとも古風な結論ですが、人間の信頼関係なくして個人データは提供されません。古風な顔の見える密接なコミュニティこそ、スマートシティが産まれえる卵のような存在です。だって人間だもの・・・。

 

 

 

 個人的には、スマートシティづくりには『東京』というドライな人間関係の都市は最もほど遠く、限界集落などの「みんな知っている」という相互扶助関係が堅固なエリアほど可能性が高いのではないかと思っています。

 

 そういうコミュニティはそもそも「みんなのことをみんな知っている」関係。だからこそ、個人のデータを提供するハードルも低い。これこそがスマートシティづくりのスタート地点ではないかと。

 

 

 

 「その1」から始まったスマートシティについての考察ですが、ここまでお読みいただきありがとうございました。

 

 次回、最終回として、私のふるさと「つくば市」をスマートシティに替えていくための手順を私なりに考えて、ご報告したいと思います。

 

 

以上