タワーマンション街は、広い街区の外周路地が非常に閑散とし、夜には暗くて寂しい雰囲気になってしまいます。
街灯はきちんと整備されているのに、街路に人の温かみを感じないのはなぜでしょう・・・。
夜の街路を照らす照明は主に2つ。
一つは道路整備によって設けられる街灯。もう一つは宅地から漏れ出す生活照明です。
宅地から漏れ出す生活照明にもレベル感があり、商店街では非常に多くの店舗照明が街路を照らします。
だんだんと戸建て住宅街に入ってくると、それぞれの家の門灯や家庭からこぼれ落ちる光が街路を照らします。
街路を歩く人に取って、その光には「何かあった時にはすぐそこに人がいる」という安心感も与えます。
一方で、タワーマンション街はどうでしょう。
ほとんどのタワーマンションは、容積率を割り増すために公開空地が設けられています。
道路から大きくセットバックして空間を開け、敷地中央で宙に向かって建てられています。
高度利用しているので敷地内の人口は多い(大きなタワーマンションなどでは、1棟で2,000人以上が暮らしています)。
けれども、1階レベルはマンションエントランス、駐車場入り口、駐輪場・・・。ほぼ人は住んでいません。
この街路から遠く、マンションとの間に公開空地があり、目線を遮るための高木植栽があり、1階には人が住んでいない。という状況は、街路を歩く人に取って、閑散と不安の心情を抱かせます。
明るさも街灯に限られ、「何かあった時に声を出しても誰か気付いてくれるだろうか・・・」という不安を抱かせます。
なぜ、タワーマンション街は夜暗いのか。
それは街路に対する建物のエッジが短く、もしくは皆無で、低層に住んでいる人は少なく(2階、3階もマンションのコミュニティスペースやジム、駐車場や駐輪場で使われていることが多い)、路地の通行者にとっての安心提供を出来ていない。
ということから来ているように思います。
街路に対しての建物エッジの重要性。
1階空間が、市民の利用できる用途になっていて、市民が街路からダイレクトに利用可能になっていること(街路側に出入口があること)。
セミパブリックスペース(軒先空間)が宅地内にうまく配置できていること。
ずっと自分が考えていた構想が、大学講義の課題図書にまさにまとめられてました。
欧州の街と日本の街は作りが違うので、中庭空間中心の街を作る必要はないのですが、本来人間が安心して暮らせる街にはこういう要素が必要だろう。という自分の考えに極めてフィットした内容でした。
ちなみに、建物の単一用途構成、単一の建物出入口レイアウト(例えば、1階に路地から直接アクセスできる店舗出入口がない。昔の公団住宅のように横長の団地型住宅に階段が3箇所といった形式ではなく、エレベータコアに繋がるエントランスが一か所だけ、など)が、なぜ街にとって良くないか。
これらを直感的にまとめてくれているのは、やはりジェイン・ジェイコブズでしょう。
以前に、自由が丘の街についても紹介しましたが、大規模開発で容積率を積み上げると、公開空地、有効空地率の積み上げと、基準超の緑地整備を求められるため、どうしても街の中でのエッジの長さは失われます。
これが、街の魅力の低下につながるわけです。防災上は良いのだけれども・・・。
この人間コミュニティにとっては良い配置、交通計画(歩者分離)・防火防災計画にとっては悪い配置、という状況は、どうすれば良いのか。まだまだ課題は多いです。
doubleincome-triplekids.hatenablog.com
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以上