昨年春先から、ずっと話題になっていた『経済を優先するべき』か、『感染症対策を優先するべき』か。
驚くことに、誰も統計データなどで説明してくれないので、自分で研究してみました。
私の仮説は以下のとおりでした。
最も経済的に優れているのは、潔癖症チーム。
最も経済的にダメなのは、マネジメントチーム。
経済的にそこそこなのは、破れかぶれチーム。
経済へのダメージを最小限に抑えられるのは、潔癖症チームなのではないか。というものです。
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さて、調査方法は以下のとおりです。
IMFのデータをもとに、2017年から2019年の実質GDP成長率の3年平均を取り、平常時であれば2020年にどれくらい成長できた可能性があるのかという期待値としました。
新型コロナウイルスによる成長率の減少 = 2020年の成長率(2020年10月IMF予測) - 期待値(過去3年の平均)
と設定し、新型コロナウイルスの影響によって、本来成長できたはずのラインからどれだけ成長率にマイナス影響があったか、を軸に検討しました。
この方法を取ると、例えば2019年10月に消費税増税があった日本(もともと、2020年は低成長が予測されていた)や、2018年、2019年とアメリカの経済制裁に苦しめられていたイランなど、個別要因の影響は見えないのですが、大枠で何か捉えられるのではないか。と考えました。
まず始めに、世界のGDPランキング上位25位までの国をピックアップし、1人当たりGDPに対して、成長率差がどうなっているかを調べました。
これは、産業別に大きな影響が出ている可能性を検討したものです。
例えば、1人あたりGDPが7,500ドルくらいまでだと、第一次産業とリゾート地観光業などが稼ぎ頭になります。
それより成長した国では、だいたいは世界の工場として第二次産業が稼ぎの中心に移行します。
1人あたりGDPが25,000ドルくらいまでは世界の工場としてやっていけます。
(最初は家電等から始まり、車・船などの重工業、集積回路へと進んでいく)
1人あたりGDPが25,000ドル以上、50,000ドル未満はほとんどの先進国が位置する水準で、高度複合経済(第二次産業も、第三次産業もうまく組み合わせた経済)となります。
1人あたりGDPが50,000ドル以上は、原価0のビジネスモデルに移行しないとなかなか達成できません。
例えば、安い法人税でタックスヘイブンとして世界の法人・個人の利益を取り込むルクセンブルク。
ドイツマルク無き今、欧州最強通貨となったスイスフランを軸に金融業を発達させるスイス。
などなど、金融を軸に稼ぐ国が多くなります。
このゾーンに入る国は、国のサイズで小さいことが特徴です。
基本的に人口5000万人以上の国家では、1人あたりGDP50,000ドルを達成するのは至難の業になります。
(詳しくは説明しませんが、他国の利益を自国に呼び込み、少人数の自国民を豊かにするというレバレッジ効果が効きにくくなるためです)
このゾーンで唯一異色なのが、3億人以上の国民を抱えて、このゾーンを達成しているアメリカです。
国民の格差を厭わず、税の再分配を最小限に止め、原価0のビジネスモデルをいくつもの軸で発展させました。
基軸通貨を活かした金融業は昔からありましたが、2000年以降、アマゾンやグーグル、マイクロソフト、フェイスブックにアップルといったテック系企業が伸びました。
ほとんどは、一度基幹システムを構築すると、あとはコピー代がほぼ0円。しかもサービスは高価販売が可能。というビジネスモデルを構築しています。
日本が得意とする自動車産業などでは、1人当たり50,000ドルの世界はつくれません。自動車を製造するには、鉄が要りますし、ゴムも要ります。設計図面は1つでも、新車1台を作るには原価がかかります。
いま、アメリカが目指している新たな電気自動車産業は、設計図面だけを作り、車を製造するのはアジアの工場に委託するというビジネスモデルです。
設計、デザインと、販売、マーケティング、加えて電気自動車のOS更新(これで儲けられるのかははなはだ疑問)だけを行うビジネスモデルであれば、自動車産業でも原価0のビジネスモデルにもっていけます。
最後に、サウジアラビアやロシアなどの産油国は、資源一本の稼ぎですので、飛行機が飛ばなくなり、原油価格が暴落した2020年は、他の国と比べてどうだったのかも見てみたかったところでした。
前段が長くなりました。
このようにまず最初に主産業別に見ることで、どのあたりの産業をメインとしている国が一番ダメージを受けたのか、調査したいと思いました。
(感染症対策と経済成長の因果関係以外の要因を探った)
結論は、まったく無相関でした。
横軸に国民1人あたりGDP、縦軸に期待値との経済成長率の減少差です。
中央値7.25%を中心に、各ゾーンでそれぞれ上下にきれいに分散し、どこかの主産業だけが決定的にダメージを受けているという構造は見られませんでした。
さて、この結果からすると、どの1人あたりGDPゾーンでも新型コロナウイルスによる経済ダメージを受けにくかった国と、多大に被害を被った国があったということです。
それでは、この差はどこから来ているのか。
次に、国民1万人当たりの感染者数を横軸、縦軸に期待値との経済成長率差を取りました。
見事に関係性が出てきました。
潔癖症チームの中央値は▲6.17%
マネジメント(成功)チームの中央値は▲7.46%
マネジメント(失敗)チームの中央値は▲8.37%
最後にやや恣意的ですが、破れかぶれチーム(アメリカのみ)の中央値は▲6.77%
私の仮説が立証されました。
破れかぶれ戦略をとった代表的な国をまとめますと、
北米の破れかぶれ代表アメリカが▲6.77%
南米の破れかぶれ代表ブラジルが▲7.06%
欧州の破れかぶれ代表スウェーデンが▲6.65%
ですので、死者を出すことを厭わずに、経済を優先させる決定を早くから下した国は、潔癖症チームよりは劣りますが、全体の中央値(▲7.25%)よりは全員良い結果となっています。
国民はたくさん死なせたけれども・・・。
なお潔癖症チームの成績は、
台湾が▲2.87%
韓国が▲4.58%
中国が▲4.75%
日本が▲6.31%(消費税増税影響もあるので、結構優秀)
オーストラリアが▲6.51%
タイが▲10.68%(観光業が大打撃)
国民の命を最優先に守ることが、経済のダメージも一番抑えられるという結果になりました。
さて最後に、今回の新型コロナウイするは人種により致死率に差がありそうなことは見て取れました。
そこで、横軸に国民1万人あたりの死者数を取って相関を見たところ、感染者数を横軸に取った時よりもさらに強い相関が現れました。
新型コロナウイルスによって多くの国民が亡くなった国ほど、国民の消費意欲が落ち(恐怖で街に出なくなる)、経済成長率のマイナス幅が大きかったということが分かりました。
人口1万人あたりの死者数が1.00人以上となったゾーンを『国民が恐怖を感じている』と名付けてみましたが、このセグメントの中央値は▲9.33%でした。
同0.20人未満の『国民が安心している』と名付けてみたセグメントの中央値は▲6.31%ですので、その差は歴然です。
結論
当たり前ですが、国民は自らの命のリスクが大きくなればなるほど街に出なくなり、その結果として消費しなくなります。
経済を優先し、GOTOトラベルキャンペーンやGOTOイートキャンペーンを続けた結果の緊急事態宣言は、感染症対策を徹底した国家運営をしていた場合と比べて、経済ダメージが大きくなっているはずです。
感染症対策を徹底し、人々が安心して出歩ける環境を作ることで、結果として経済悪化を防ぐことができる。
これが、今回調査してみてわかったことです。
以上