あまりポリティカルイシューを書くのもどうかともいますが、私の社会人人生の半分以上の期間、安倍さんが首相でしたので、何が功績で、何が最大の欠陥だったか、自分なりにまとめてみたいと思います。
最大の欠陥は、日銀のBS悪化
これについては、MMTやどこぞの経済学者などが、国と中央銀行を一体化して見れば何ら問題ない。
とおっしゃっていますが、それは算数の出来ない人の精神論です。
日銀の資産は、長期日本国債で膨れ上がっており、ETF(株、REIT)も尋常じゃない規模になっています。
対して、日銀当座預金は500兆円。
政権が発足してから約5倍になっています。
日銀当座預金が膨れ上がるということはどういうことか。
これは、本来の目的と一緒ですが、お金の流通が円滑に進みやすくなる。ということです。
お金が回っていることを景気が良い、お金の回るスピードが落ちることを景気が悪いと言います。
10人で、1つのバトンを回しあっているときに、みんなが疲れてバトンを回すスピードが落ちると、なかなか次のバトンは回ってきません。これが不景気です。
ここで、バトンを8年間で4本増やし、10人で5本で回してみようとした。
これであれば、次々にバトンが回ってくるように感じる。景気が良いように感じる。
そんなところでしょうか。
M3はせいぜい30%くらいしか増えていないので、バトンが5本になったという表現は少しおかしいのですが、「予備に用意されているバトンは確かに5本になった。」という感じでしょうか。
それでは、なぜ日銀当座預金を増やすと良くないのでしょうか。
当たり前ですが、さっきのバトンの話で言えば、みんながせっせと以前と同じリズムでバトンを回し始めれば、次から次にバトンが手元に回ってきてその通貨を使う人が疲弊します。これがインフレです。
今現在は、バトンが増えたので、みんなが回すスピードをのんびりモードにしています。
日本銀行券をベースにする経済圏は、アベノミクスで『お金をのんびり使う(長期に安い金利で貸付ける)』ことに慣れきってしまいました。
こうなると、おおもとのバトンをしまう時に、みんなが大慌てになるのです。
お金を『いつものリズムで使う(長期にお金を借りるときは高い金利を払わなければならないので、短い期間でしかお金を借りない)』ことを忘れてしまっているからです。
お金の流動を高める(例で言えばバトンの回ってくる回数の話)ことと、お金の流通速度を上げる(例で言えばバトンを速く回す話)ことは全く別物です。
それでは、魔術師的な経済学者がいう「いくら日本国債を発行しても、日銀が買えば問題ない」という話はどうか。
日本銀行券を使う人が、今後未来永劫、お金の流通速度を次第に低くしていく、『お金をのんびり使い続け、さらにのんびり使うことに慣れる』ことで、何とか成り立つはずです。
どこかで、『この”のんびりとしたお金”を使って、せっせと回せば、儲けられるんじゃない?(主に国際投資)』という雰囲気が日本全体に出てきたら、インフレが起きます。
これを止める手段を安倍政権は無くしました。
みんながどこまでも高齢化し、みんながどこまでもキャッシュフローに疎くなり、みんながどこまでも成長をめざさなくなることで、日本経済(日本銀行券)は成り立ちます。
成長を目指したはずのアベノミクスは、実は成長意欲をそぐための政策に他ならないのです。
経済に興味の無い方には、まったく興味のない話を書きました。
それでは、私が思う安倍政権の功績を書きたいと思います。
①どの国とも仲良く
安倍政権は、とにかく八方美人に勤めました。東アジアに対して以外・・・。
これは、政権としては素晴らしいことです。
他国に対して何の主張もしなかった、けれども何も衝突を起こさなかった。
『あのドナルド・トランプですら、個人的な悪口をツイートしなかった唯一の国家代表』
『ウラジミール・プーチンに対して、個人的に仲良く出来た数少ない西側国家代表』
これだけでも、すごい功績だと思います。
何かあった時に、「自分の支持率回復のためにあいつを虐めてやろう。」と大国に思わせない関係作り。
素晴らしかったと思います。(日本がターゲットに出来るほど目立った存在ではなくなったともいえますが・・・)
②真のグローバル化に向けた一歩を踏み出した
インバウントという言葉にまとめられていますが、安倍政権はビザの発行基準を緩め、外国人観光客を多く受け入れる体制を作りました。
『観光公害』という言葉も出てくるほど、異文化の観光客が増加しました。
これは、真のグローバル化に向けた第一歩です。
外国人観光客が増えると、そこで異文化の軽い衝突が起こります。
でも、これはたった数日我慢すれば・・・という気持ちで、標識などを建てたり、その国の言葉や英語で注意喚起を書いたり、基本はその自治体でマネジメントできる範囲の衝突になります。
次に、その外国人観光客の需要を目的に、その国の人が、日本の観光地に住み始め商売を行います。(だんだんとこのフェーズに入ってきていると思います)
そうなると、次の異文化衝突が起きます。
住みついた方との調整、その家族、子供をどのように受け入れるか。
その国の人たちの需要が、すべて住み着いた人に取られる。その他様々なフラストレーションが地元に湧き上がります。
それでも、日本に住みつかれた方は、その観光地の良さを自国の方に伝え、日本に来てもらうことで商売が成り立ちますので、基本はそのエリアの応援団です。
例え衝突が起きたとしても、どこかでは解決策を見出せます。
最後に、「日本に住もう」と思う外国の方が増えます。
訪れた観光客の話を聞き、「外国に行ってみよう」と思う日本人が増えます。
『国家』『領海』という線をまたいだ行き来が活性化し、異文化の良いところを感じあい、差異のある部分を楽しめるグローバル人材が増えていきます。
この過程の第一歩を安倍政権は作ってくれた。
オリンピックを上手く使って、この8年間で第二歩(外国の方が自国の方を相手に商売をするため、白馬やニセコなどに住み着いてくれた)まで進むことができました。
この流れは、日本のファンを増やすためにも大切な取り組みです。
良い思い出のある国とは、喧嘩したいと思えなくなりますからね。
③男女雇用機会均等の具体的施策を進めた
長男の育児休職を取得した2013年2月に比べて、長女のとき、次男の時は、圧倒的に子育てがしやすくなりました。
男性として育児休職を取ることへの風当たりも、向かい風(長男)から完全な追い風(次男)に変わりました。
男性一人で乳児と移動する際に必要になる社会インフラ(男性トイレのおむつ替えスペースや、子供の腰掛が用意されているトイレ個室区画、ミルク調合スペースと授乳室が区画されている子育てコーナーなど、長男の時を考えると、この8年間で様変わりしました。
時代の流れもあったと思いますが、安倍政権功績は大きいと思います。
ここから先は、『ここまで頑張ってほしかった』という本音を書きます。
『最大の欠陥』と書いた金融緩和施策も、短期・限定的であれば経済の治療薬として用いることは出来ます。
この8年間、安倍政権はその治療薬を使い続けました。
金融緩和は『経済のモルヒネ』ですが、安倍政権は日本全体を『モルヒネ患者』にしました。
そこまでの副作用を抱える施策だったので、できれば日本企業の構造改革、痛みを伴う施策をもっと進めてほしかった。
飴(金融緩和)と鞭(構造改革・規制緩和)をもっとバランスよく進めてほしかった。
日本企業は、飴の見返りとして、毎年2%の賃金UPしか差し出さなかった。
もう少し、何か出来たのではないだろうか。
この点が残念でなりません。
次の政権に期待すること
この未来永劫続くと国民が勘違いし始めた『金融緩和施策』の後始末をしてください。
国全体、経済全体が『モルヒネ患者』ですので、当然、禁断症状(資金の流通量が減ることによる不景気)が出ます。
しかし、その禁断症状はリハビリがあとになればなるほど強烈なものになります。
次の政権が出来ることは、『構造改革』などのカッコいいものではなく、『如何に痛みを少なく抑えながらモルヒネ患者をリハビリするか』です。
それ以外は、その次の政権で良いです。
まずは、安倍政権のしりぬぐいをやってほしい。
以上