生産性を上げるためにはどうすればよいか。どんな仕組みが必要か。
デベロッパー業界では、特区制度を用いたまちづくりにおいて、都市貢献用途として行政から常に求められる施設になります。(イノベーション促進機能の導入)
また、近頃で言えば岸田内閣は「防衛力強化」を打ち出しました。
近代兵器が進化する中でも、最も現実的な戦いは、サイバー空間だと思います。
人や建物を破壊することなく、敵国経済をサイバー攻撃によって破壊することで、そもそも戦えなくすることができる。
戦わずして勝つ。孫子の最も重要とする戦い方を実現できる形です。
さて、生産性を上げるにしても、サイバー空間を防衛するにしても、実際に戦争で戦うにしても、どんな人財を要するでしょうか。
ロシアでは、ウクライナへの出兵を望まない市民が増え、『40歳以下』という入隊基準を緩和するそうですが、物を作るにせよ、国土を防衛するにせよ、若者のエネルギーと飛躍的な発想力が必要なわけです。
私自身、20代の頃に出来た徹夜の日々、毎日の観測、分析、シミュレーションプログラムの構築、と言った研究室の毎日は、40歳になった今、半分は行けても7割が上限か?という感じです。
集中力もパワーも劣ります。
その替わりとして身に着いたのは、組織マネジメント力であり、忍耐力です。
いずれも組織を動かすための力ではありますが、一番おおもとの「若手の活動力」「パワー」があってこそ生きるものです。
端的に申し上げると、国力(もしくは都市力)は組織的に動ける教育がなされた20代、30代のボリュームで決まると考えています。
20代、30代に厚みのある中技能労働者、高技能労働者が集まる国、都市ではイノベーションが生まれます。
当然、保守層が大好きな国防力も発揮できます。
ここから、いくつか人口統計を紹介します。
日本
日本の労働年齢人口は1995年にピークを迎え、総人口は2008年ごろから減り始めました。
日本の労働年齢人口割合のピークは1992年で、約69%でした。
韓国
韓国の労働年齢人口は2015年(日本に対して約20年遅れ)にピークを迎え、総人口は2020年(約12年遅れ)ごろから減り始めました。
韓国の労働年齢人口割合のピークは2018年(日本に対して約26年遅れ)で、約73%でした。
韓国は、急速に少子化を進めることで、年少人口割合を低く抑え、労働年齢人口割合を高い水準で維持しています。これについての分析は後ほど。
中国
中国の労働年齢人口は2016年(約21年遅れ)にピークを迎え、総人口は2022年(約14年遅れ)ごろから減り始めました。
中国の労働年齢人口割合のピークは2013年(約21年遅れ)で、約73%でした。
中国も、2020年以降、急速に少子化を進めることで、年少人口割合を低く抑え、労働年齢人口割合を高い水準で維持する傾向が現れています。
東アジア各国が陥っている現象とは
中国も韓国も、人口動態的に言えば日本の2000年頃の状態にいます。
団塊世代が50代。
団塊Jr世代が25歳~35歳です。
ちなみに今の中国の人口ピラミッドに合わせようとした場合、日本の2002年ごろの人口がそれに近かったです。
国家が、その年度の生産力を絞り出そうとしたとき、若い力としての団塊世代Jrと、組織をマネジメントする団塊世代を何とか最大限に活かそうとします。
その結果として、若い力を「今」の生産力に使いすぎてしまい、「将来の生産力を再生産する」時間を与えない状態になっています。
子供が今年生まれることは、今年度のGDPにはほとんど効きませんが、30年後のGDPには絶大な影響を及ぼします。
人口の分析には「負担率」という考え方があります。
今ある労働力である「労働年齢人口」の割合と、扶養される関係にある「年少人口」と「高齢者人口」の割合の比になります。
ホモサピエンスは長らく、労働年齢人口割合は6割の社会でした。
年少人口が4割。高齢者人口は0割。働けなくなった高齢者を養えるほど、社会は豊かでなかった時代が続きました。
工業生産が出来るようになって、ようやく高齢者を支えることができる世の中を作ることができました。
労働年齢人口がこの6割(扶養人口割合の4割を差し引いても労働年齢人口割合が2割余る状態)を超えると、「人口ボーナス」と言われる、国家が発展する状態。
この伝統的な6割の水準を下回ると「人口オーナス」と言われる、扶養することで精一杯になり、新し生産活動に手が回らない状態となります。
日本は人口オーナスに突入し、今後ずっとその状態が続きます。
韓国や中国は、2000年ごろの日本と同じ状態です。
これから10年後、団塊世代が生産活動から引退していき、扶養される立場となる。
団塊世代Jrは、現在の生産活動の維持と、親の扶養を考慮すると、子供を産むどころではない(自分自身が1人子のことが多く、多くても2人なので、親の扶養が必ず回ってくる)。
団塊世代は、自分たちの兄弟が多く、親の高齢化も進んでいなかったので、親の扶養負担が軽く、子供を2人持てた。
団塊世代Jrはそうはいかない。ここを政治家は取り違えている。
労働年齢人口にとって、自分が負担すべきは、自分、パートナー、親(高齢者人口)、子供(年少人口)なので、親の扶養が重くのしかかれば、まだ確定していない子供の数を減らすことで、自分が扶養できる全体コストをマネジメントする方向に走る。
親の扶養が一般的ではない、完全核家族形態のアメリカなどでは、この個人レベルとしての「親の扶養」という概念が極めて薄いので、いつの世代も「子供の扶養」だけを計算する傾向にありますが、儒教精神が行き渡った東アジアではそうはいかない。
確定している親の扶養コストがある以上、まだ確定していない子供の扶養を減らす。
これが、2000年ごろの日本の状態であり、現在の韓国と中国の状態です。
さらに強烈なのは、儒教精神が行き渡っている国ほど、子供の数を減らす傾向にあるということ。
現在の生産力を維持するために全力を挙げているともいえます。
日本は、2005年に合計特殊出生率が1.26となって以降、子供を社会として増やす方向を模索するようになりました。
韓国は2021年合計特殊出生率が0.81。中国は1.1になりました。
まだ底をついていません。
どこかでは、日本がたどった道のように、今の生産性を一部妥協し、若者のCOL(クオリティー オブ ライフ)を上げる取り組みに舵を切らなければならない時が来ます。
住宅バブルの崩壊は、どの国でも大よそ労働年齢人口のピーク前後に現れます。
「過去の傾向」を前提として今まで通りに住宅を供給する不動産デベロッパーと、実際には増えない労働年齢人口のギャップが広がりすぎて、マーケットがクラッシュするからです。
経済的にも韓国や中国はその瀬戸際にいる。そんな状態です。
個人的に考えていることは以下のとおりです。
①今の軍事費にお金をかけるくらいだったら、そのお金を少子化対策と教育に充てなさい
それが30年後の日本の国防に絶大な効果を発揮します
②子供が生まれること、子供が育つこと、中等教育教育、高等教育がなされる事
これらは将来の生産性を支えるものになります
企業のバランスシートに「人財」という資産を入れたいとおっしゃられる経営者は多くいますが、国のバランスシートに「年少人口」という資産を組み込んでみてはいかがでしょうか?
新しく0歳児が生まれることをその年のGDPに加算できると、国家として「今年度の労働活動で今年度の生産に貢献すること」と「今年度の育児で将来の生産に貢献すること」のトレードオフ関係を明確に出来ます。
日本も、韓国も、中国も、このトレードオフ関係を明確に定義できなかったがゆえに、将来の生産活動を担う子供たちのリプロダクトの重要性を軽視し、現在の生産活動に邁進してしまっているわけです。
子供が250万人生まれていた1947年と、子供が81万人しか生まれていない2021年で、日本の30年後がどんな社会であるかは明確に見えてしまいます。
それにもかかわらず、たとえ子供が250万人生まれたとしても、81万人生まれたとしても、その年のGDP換算がほぼ一緒(実際には病院などでの消費があるので今の統計でも少し異なるけれども)でよいのか?と。
例えば、子供が1人生まれると、国家として1億円の価値があると定義すれば、2020年に84万人の子供が生まれたことに対して、2021年は81万人しか生まれてこなかった事実を、「GDPが対前年に対して3兆円減りました。」という風に表現できるわけです。
最後の「p」は、「物」だけではなく「人」の要素もちゃんと表現できるようになれば、だいぶ社会の目標設定が変わるように思います。
さて、大変長くなりましたが、この21世紀、どの国が活躍できるかは、これも人口ピラミッドを見れば一目瞭然です。
アメリカ
アメリカも労働年齢人口がピークを迎えつつありますが、どの世代もまんべんなく厚みがあり、世界の優秀な人財をかき集めます。
少なめに見える年少人口は、常に20代の移民で補われる世の中を作り続けています。
人口ピラミッドを見れば少なくとも30年後までは予測可能です。
人口! それがすべて。
参照
以上