ダブルインカム トリプルキッズ blog

夫婦共働きの子育てを実践しながら、パパ育児の苦労と楽しさをご紹介します。

219.あるまちづくりオーナーとの別れ

先月、いつも利用していた商店街のお肉屋さんのシャッターが開かなくなりました。

 

「都合によりしばらくの間休みます」

 

と書いてありました。

 

戦前生まれの店長と、夕方から手伝う奥さんとで運営されているお肉屋さんで、10年以上通っていました。

 

 

 

昔の商店街がにぎやかだった頃の話。

 

自分が商店街の青年会を務めていた時は、警察協議をやって前面の道路を歩行者専用化して、夏祭りを開催していたという話。

 

100歳まで肉屋をやるんだ(70歳後半当時)。という話。

 

過去50年、まったく病気をしたことが無くて、薬も病院もお世話になったことが無い。という話。

 

 

 

とにかく、街のみんなを見てくれている存在でした。

 

長男が初めてお使いに一人で出かけたのも、このお店。

 

「あの赤ちゃんが、1人で買いに来たと思ってうれしくなっちゃった」

 

後日、おじさんから話してもらいました。

 

 

 

 

 

街は、ワンルームマンションや、ファミリーマンション、チェーン店だけでは成り立ちません。

 

これらは、すべて街に対して「金銭決裁」の関係です。

 

ワンルームマンションは、どこに住んでいるかわからない投資家が、賃料の中から管理費を払い、管理人さんが前面歩道を掃除してくれて、ゴミ出しをしてくれます(良いワンルームマンションの場合)。

 

ファミリーマンションは、そこに住んでいる住民がみんなで管理費を出し合っていますので、ワンルームマンションよりは少しだけ街に近づきますが、それでも街との関係は管理人さんと管理会社というフィルターが一枚挟まった印象です。

 

チェーン店も同じで、みんな雇用関係ですので、マニュアルにあることを淡々とこなしていってくれる感じで、その商店街を盛り上げて、楽しい地域を作って、新しい家族がその街を選んで住み着いてくれるような、そんな商店街づくりに協力してください!

 

と頼んでも、金銭協力以上のものはなかなか出てきません。

 

(アイデアは出してくれないし、企画運営も手伝ってくれないけれども、金銭協力と、当日必要となる若手スタッフは何人か提供してくれてるというチェーン店はあります。若手を当日かしてもらえると、とても助かります。)

 

ここまで書けばお分かりになると思いますが、これらのアセットだけでは、誰も「まちづくり」を推進する人が現れず、何かあったら「いくら出せばいいの?」と協賛金で解決する(協賛金を出してくれる場合はそれでも良い方)人たちになります。

 

 

 

 

まちづくりを推進できるのは、あくまでも「自分の時間」と「自分のアイデア」、「労力」と「場所」などを提供してくれる人です。

 

これができるのは、まちが活性化し、治安が良くなり、新しい家族が入ってきてエリアの消費量が上がることでメリットを感じる人たちです。

 

個人住宅オーナや、個人商店などが該当します。

 

 

 

しかし個人住宅も、オーナーごとに性質が大きく分かれ、個人として街に対して義務を果たそうとされる方は、マンションの管理人さんと同じく自分で前面歩道の清掃やゴミ集積所の清掃当番などをされます。この場合、まちづくりオーナー側の強い担い手です。

 

こういった人は、まちの治安や活性化に興味がある人たちですので、まちの維持管理に自分の時間を割いてくれます(そもそも道に出てきて掃除をしているだけで、まちの治安維持に大きな役割を果たしてくれている)。

 

逆に、まったく街に対して貢献せずに、家の中に閉じこもる個人住宅オーナーもいます。この場合、家の前の歩道清掃などは、『誰か任せ』になるので、マンションで管理されている場所より悪い状態になることもあります。

 

 

 

そんな中でも、最もまちが活性化した時に利益が上がるのが、商店街などにある個人商店です。

 

まちに若い家族が入ってきて、消費量が上がると、自分のお店のお客さんが増える。

 

このWINWINの関係にある個人商店は、まちを活性化させるときになくてはならない存在です。

 

 

 

個人商店は、大手チェーンスーパーとの競争でどんどん数を減らしていますが、いま街に必要なのはこの個人商店の方だと思っています。

 

たしかに『GDP』という観点で言えば、間違いなく大手チェーンスーパーの方が1人当たりGDPを高められる可能性があると思います。

 

しかし、今、間違いなく街に求められているのは、個人商店の方だという認識があります。

(ちなみに、この考えもエリアに大規模スーパーがあってこそ成り立ちます。近くの大規模スーパーで何でもそろうという状況が生活基盤にあって、そのうえで商店街に個人店主が居てくれる。この状況が生活利便性を最大限に向上させてくれます。大規模スーパーが、東京資本ではなくそのエリアにしかない個人オーナー企業だったりすると、その街は大変ハッピーな状況と言えます。)

 

 

 

GDP』には換算されていない街に対する貢献。人的資本を街に提供してくれること。

 

『夏祭り』を企画し、実行するにはたくさんの人財、時間、労力を必要とします。

 

実際、『夏祭り』での売上と、これらの時間、労力が見あっているか、というようなことを考え出すと、始まりません。

 

このエリアに住んでいて良かった。

 

と、住人が思える仕組みづくりとして、どんなイベントが必要かを考える人がいて、実行できるだけの労力を出してくれる人がいて、最後に実行するためのお金を協賛してくれる企業があって、こういったすべての協力があって街づくりイベントは成り立ちます。

 

 

 

 

 

最後になりますが、肉屋さんのおじさんは、日曜日の朝の散歩中に倒れられて亡くなられたとのことでした。

 

その前日まで我が家は、お肉を買いに行っていました。

 

10年以上に渡り、週に1~2回は必ずお話をする相手でした。

 

子供の成長を見守ってくれる有り難い存在でした。

 

その店長が、一瞬にして目の前から居なくなってしまいました。

 

 

 

昨年、コロナによって在宅勤務が増え、「お客さんが多くなりすぎて回らない」「この夏は本当に疲れた」「腰が痛くてよ」「疲れが抜けないんだ」と、約50年ぶりに病院に行かれて、それから通院されていました。

 

3月には目の手術もされていました。

 

「すごくきれいに見えるようになったよ!見えるようになっちゃったらさ、店の中の汚れが目に付くようになっちゃったの。きれいにしていたつもりだったのに!掃除しなきゃ。」みたいな話を3月末にも聞きました。

 

せっかく、体の調子が良くなったところだったのに・・・。

 

 

 

「そろそろラーメンとか食べに行きたいんだけど、何かあってお客様に迷惑をかけちゃいけないってんで、1年以上まったく外食していないんだよ。コロナのワクチン打ったらラーメン食べに行きたいね。」という話も年明けから何度も聞きました。

 

天国に行ったら、ぜひラーメン食べに行ってください。

 

ご冥福をお祈りします。

 

以上