ダブルインカム トリプルキッズ blog

夫婦共働きの子育てを実践しながら、パパ育児の苦労と楽しさをご紹介します。

417.やっぱり無能だった  ~黒田日銀に白黒つけよう~

特別お題「今だから話せること

 

 

ちょっと今回は経済的な話。

 

黒田日銀の10年が終わりました。

 

その間にアベノミクス × 黒田日銀は壮大な社会実験を行いました。

 

中央銀行が大規模金融緩和を行うことで、経済は良くなるのか。

 

さて、デフレがいけない。円高がいけない。いやいやインフレがいざ起きてみると国民は苦しい。円安がいけない。様々な声が聞こえてきますが、おおもとを忘れちゃいけない。

 

 

 

デフレが経済停滞を招くと言われるのは、下記の背景があるからだ。

 

1990年代以降日本は世界で唯一の長期デフレ経済に突入した。

 

そして、唯一のデフレ経済の日本だけが名目GDPが成長しない(注意:実質GDP【自国通貨建て】は成長している)。

 

これに因果関係を見出した経済学者が、

 

デフレだから名目GDPが成長しない。

 

という仮説を立案し、囃し立てた。

 

 

 

この仮説、このデフレと経済成長の関係が真の相関関係なのか、疑似相関関係なのかが問題。

 

経済学は、学問というには少しファジーな要素が強く、大衆心理学に近い。

 

過去の結果を後世の学者が分析する学問なので、この因果関係が正しいのか、それとも疑似相関でまったく別のところに原因があるのかは、結果が出ないことには分からない。

 

けれども、世界で唯一の長期デフレ経済に突入した日本では先例がないため、経済学者の仮説を検証するとすれば、自分たちで行わないといけない。壮大な社会実験してみないとわからない。

 

このデフレ退治をやるには、かなり中央銀行がリスクを負う。それをやるかやらないか・・・。というのが黒田日銀が誕生するまでの日本だった。

 

壮大なギャンブル。自国通貨の信用を失墜させることによる通貨安政策とデフレ退治(通貨安によるコストプッシュ型のインフレ発生)をやることになる。本当に勝算があるのか確信が持てない中、「とりあえずやってみよう!」というにはあまりにも失敗した時のコストが高い政策。

 

失敗すれば1960年以降の高度経済成長で確立した日本円の信用を全面的に失い、悪性インフレが止まらなくなるリスクがある。

 

それでもこれに無謀にもチャレンジしたのがアベノミクス × 黒田日銀。

 

 

 

デフレが緩やかなインフレに変われば経済は成長軌道に乗ると信じて・・・。

 

 

 

そもそもなぜデフレと経済が停滞する因果関係をどう説明できるのか。

 

消費サイドから簡単に言えば、消費者にとっては今買うよりも来年購入する方が商品の値段が下がると期待されるので、1年間長く使って(例えば車、例えばスマホ、例えばコート・・・)来年買おうとなる。

 

消費サイクルが長くなるので消費活動が停滞し、経済が停滞する。

 

裏返せば、「ものを大事に使って長持ちさせる」「まだ使えるものは大切に使う」「もったいないの精神が生きている」「SDGs」となる。

 

「どんどん買い替えろ!」というGDPの考え方と、「物を大切にする。」というSDGsの精神。どちらが正しいか。

 

少し経済の話しからそれたのでもう一度経済の話しに戻す。

 

 

投資サイドから言えば、借金して工場を建てた時に考えていた商品の価格よりも年々商品の値段が下がっていくので、いつまでも工場の投資金額を回収できない。

 

次の最新設備を備えた工場に更新するまでに時間がかかる。民間設備投資が減少する(GDPが減少する)。また設備投資が積極的に行われないので、労働生産性が高まらず、結果として労働者所得が増えない。

 

以上のように、長期デフレと経済停滞の因果関係を想像では説明できる。

 

しかし、それは経済停滞の真の原因であるといえるのか・・・。

 

例え緩やかなインフレ状態であったとしても、ある条件下では経済停滞することがあるのではないか(スタグフレーションという)。

 

日本で、真の原因が別のところにあって経済停滞しているのであれば、消費者からすれば、「どうせ経済停滞するのであれば、物価が上がる(インフレ)よりも物価が下がってくれた(デフレ)方が有難い。」となるだろう。

 

もう少し細かい分析を今後行おうともうが、アベノミクス × 黒田日銀の成績表だけ最初にまとめてみる。

 

 

 

 

たしかに低金利×円安政策には一定の効果を期待できる。

 

そもそも低金利で金融がジャブジャブに緩和された状態であると、投資基準が緩和され、あまり儲からないビジネスでも投資されることになる。(例えば利回り3%が期待できるビジネスにおいて、金利が3%の場合は投資されませんが、金利が1%なら投資決定される)

 

民間の設備投資が増える期待を持てますが、世の中に生産性の低いビジネスモデルがはびこる原因にもなります。

 

また、例えばこの低金利×円安政策によって熊本に台湾から半導体工場を誘致できた。

 

これは円安効果によって、日本の中技能労働者の所得水準が東アジアの中で『普通』になってきたからだ。(であり、消費地【日本】への輸送費用とのソロバンが合ったから)

 

もし円高のままだったら、この国内投資は日本には発生せず、海外での投資になっていたはずだ。

 

少なくとも低金利+円安(日本の労働者給与をドルベースで引き下げる)は設備投資の増加に効いたはず。

 

 

 

黒田日銀の10年間の成績
(正確には2023年1〜3月期が現時点では未発表のため、9年9か月)

まずGDP全体(9年9カ月間の増減)


名目GDP +11.5%(年率1.12%)


実質GDP + 4.6%(年率0.46%)


こんな危険な社会実験をして、この結果かい!と突っ込みたくなる悲惨な数字です。

 

 

 

それでは、私が考えた「国内設備度投資増には寄与したはず」という仮説はどうか。GDPの内訳を見てみます。

 

GDPの約55%を占める民間消費支出

 

名目GDP +7.0%

 

実質GDP ▲1.8%

 

やっぱり、物価が高騰する(ザックリと言えば実質GDP成長と名目GDP成長の差分がインフレ分)と消費活動は鈍るんですね・・・。

 

 

GDPの約15%を占める民間設備投資(私が増えると予測した項目)


名目GDP +28.4%


実質GDP +15.7%

 

ほらやっぱり実質GDPでも増えてる。

 

 

GDPの約20%を占める政府最終消費支出

 

名目GDP +22.6%


実質GDP +17.5%

 

まあ、国家予算増えていますからね・・・。

 

 

 

じゃあ、最終的に民間部門と政府部門それぞれの需要合計はどうだったのかと言えば

 

需要名目(ウェイト) 名目増減  実質増減

民間需要(約75%)  +11.4%    + 1.0%

政府需要(約25%)  +22.3%    +14.5%

 

 

民間需要(民間の消費支出+設備投資)は10年間で全く伸びず、政府需要のみが伸びている。

 

 

【まとめ】

以上より、今回の壮大な社会実験、アベノミクス×黒田日銀の10年間の成果としては、以下のとおり評価できます。

 

①低金利×円安の効果として民間の設備投資の増加は期待通り発生した(実質+17.5%)

 

②しかし、円安による物価高騰により、民間消費支出は減少した(実質▲1.8%)

 

GDPのウェイトの差やその他の項目の要素から、民間設備投資の増は民間消費支出の減などでキャンセルされ、民間需要は全く伸びなかった(実質+1.0%)

 

④結局、実質GDPの増は、日銀が政府の借り入れを財政ファイナンスしたことによって増えた政府需要によるものだった(+14.5%)

 

⑤そして、日銀にとってのリスク資産である日銀当座預金(日銀にとっての借金)は、約11倍(47兆円 ⇒ 520兆円)に増加した。

 

⑥この結果から、インフレと実質GDP(経済発展)には因果関係はない。一方で、デフレと実質GDPにも因果関係は見いだせない(デフレで価格が下がり購買力が増す)。

 

この壮大な社会実験で得られた結論は、日本の経済停滞を治療するための薬は金融緩和、デフレ退治ではなく、その他に真の原因(治療すべき患部)があるということだ。

 

 

 

中央銀行のバランスシートをGDPを上回る規模まで膨らませて、この結果かい・・・。

 

悲惨だな。

 

 

 

 

【最後に国民としてもう一言だけ】

 

黒田氏本人は最後の記者会見で自画自賛

 

大規模緩和は「成功」、2%物価目標の達成に近づく-黒田日銀総裁 - Bloomberg

 

本気か? 本物のアホなのか?

 

金融緩和の副作用は、金融引き締めの時に絶大に発生するものだ。本人も痛いほどわかっているでしょうに。

 

金融緩和期間中に「副作用よりも効用の方が上回る」のは当然だ。

 

金融引き締めを完了したのちに「副作用」が「効用」を上回れるかどうかが焦点だ。

 

こんな大ギャンブルを実施した張本人が、10年続けてもなお出口戦略に関して「時期尚早」というのであれば、それは黒田氏にとって「出口戦略を思いつきませんでした」と言っているに等しい。

 

戦争は始めるのは簡単だが、終結させるのが難しい。

 

金融緩和もそれに類似している。

 

アベノミクス × 黒田日銀は、大規模金融緩和という壮絶な社会実験を開始し、拡大し、収集を付けられずに敗戦濃厚になってもなお「出口は時期尚早」と言っている。

 

この姿は「続けていれば最後は神風が吹く・・・」的な様相になっている。

硫黄島まで陥落してもなお精神論を前面に押して戦争を続けた大本営の「失敗の本質」そのものだ。

 

「飛べないのではないかと思った時に飛べなくなる」

 

黒田氏が引き合いに出した童話ピーターパンからの言葉だが、「飛べないのに飛べると思って塔から飛び降りる大人」になってはいけない。

 

金融緩和から覚めるときのディープな二日酔い症状(経済停滞)はこれからやってくる。

 

経済が好調なアメリカですら、金融引き締めの副作用に苦しんでいる。

SVBが破綻、米当局の管理下に-過去10年余りで最大の米銀破綻 - Bloomberg

 

 

 

国際人は「結果で評価される」という当たり前の常識の上に活躍する。

 

無責任にプロジェクトを始めて、後始末できずに後世にぶん投げるリーダーを無能だという。

 

この10年の黒田日銀の成績は完全に落第点だ。とてもじゃないが進級させられる内容じゃない。

 

 

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以上