2022年の日本国内の出生数が、報道の通り80万人を切りました。
ここから外国籍の子供を除いた日本国籍の子供は約3万人減りますので、今年6月に発表される日本国籍の出生数は77万人前後になるでしょう。
6月に同時に発表される2022年の合計特殊出生率(速報)も1.27〜1.26と推察されますので、2005年に記録した過去最小の出生率に肉薄することになると思います。
長男と長女の生まれた世代は100万人以上の子どもたちが生まれていました。
次男は86万人、次女はとうとう77万人…。
たった10年。もっと言えばたった7年でここまで減ったか・・・。
さて何度か話題にしていますが、毎年の合計特殊出生率は、その年の出生数に対するその年の出産適齢期女性の人数によって算出されます。
昨年までの合計特殊出生率の内訳はこんな感じ。
また、それぞれの5歳階級別の暦年比較としては下記のブログが分かりやすいです。
この7~8年だけでも20代の出生率が激減していることが分かります。
また、30代前半(30歳~34歳)もこの5年は減少傾向で、30代後半(35歳~39歳)は横ばい、唯一40代だけが右肩上がりを維持しています。
ただ、やはり40代になって出産する人の割合は少ないので、20代、30代の出生率の減をまったく補えない。
これを、母親が生まれた西暦ベースでコーホートに直してみると、このブログで何度か紹介している下記のグラフになります。
団塊世代の女性(1947年~1949年)はコーホート出生率が2.0をちょっと切る水準で、その後も1955年生まれの女性くらいまでは2.0が続きますが、そこから一気に駆け下り、団塊Jr世代(1971年~1974年)は1.45前後まで下がりました。
そこから、1980年生まれに向けて回復傾向で、1980年生まれは1.5を少し超える水準まで回復。
つまり、現在の40代女性まではコーホートで見るとだいたい1.5人出産している。
それではなぜ、合計特殊出生率が1.5を下回っているかというと、其々の世代が少しずつ出産を後ろずらしにしている(晩産化)影響。ということになります。
人間にも生物としての限界がありますので、どこかで晩産化が止まれば、今のままコーホート出生率が1.5で維持される限り、どこかでは合計特殊出生率が1.5まで回復する。
そういうロジックになるはずです。
さて心配な状況としては、1990年前後生まれの世代です。
30代前半までの出生率(黄色い棒グラフの上端ライン)が、1985年生まれまでよりも下がってきている。
この30代前半、1990年前後に生まれた世代に向けて、何とかコーホート出生率が1.5まで伸びるように政策を展開することが短期的には重要となります。
出展:population-pyramid.net
既にこんな人口ピラミッドになってしまっている日本において、年を追うごとに出産適齢年齢の女性人口は減っていきます。
とにかく一刻も早く、可能性がある施策は何でも試してみることが必要です。
・婚活支援
⇒東アジアの儒教文化では、いまのところ結婚しないと子供が生まれない(≒子供ができると結婚する男女が多い)。婚活支援のマッチングアプリサイトなどと連携し、結婚に向けた出会いの場づくりには補助金を出すなど。
・結婚支援金制度を作る
⇒いざ結婚しようとすると、古い習わしもあり、現代日本でもかなりの金がかかります。どこまでやるかはそれぞれの家庭の考え方、個人の事情によると思いますが、やっぱり金が要ります。そこで結婚をあきらめられてしまうと、子供は増えない・・・。結婚の際(婚姻届けを提出する際)には、数10万円程度でも補助金が欲しいかな。
⇒結婚すること、子供をもうけることで、所得税の減税効果が得られ、可処分所得が増えるというインセンティブを作る。
・ヘリコプターマネーを撒くなら子育て世帯に
⇒インフレが顕在化した現在は鳴りを潜めましたが、コロナ前まではMMT理論がまことしやかに議論されていました。政府の借金は中央銀行に背負わせて、政府が最終消費者として積極的に金を使う(無駄遣いも含めて?)ことで、デフレ状態を脱却するというのがヘリコプターマネー施策。政府が撒いたお金が、すぐに貯蓄に回されてしまうと経済波及効果が出ませんので、できる限りすぐに使ってくれる人に撒いた方が効果が大きくなる施策でもあります。もしもヘリコプターマネーを撒くのであれば、子育て世帯(というか子供)に対して月々10万円、15歳まで配ります。というのはどうか。子供を育ててくれたら1800万円/人の補助金を出します。みたいな政策に使った方が、消費活動に回るお金が増えて良いと思っています。なお、大学まで子供を通わせたとして、すべて公立高校に入れても都内で子育てをすると子供一人あたり4000万円+α程度親は負担することになります。それをすべて親に負担させるべきなのか、半分くらいは国が負担してでも子供の数を増やそうとするのかは国家方針かな?と。
ただ、MMTはサマーズ氏が言っているように呪術に近いキワモノだと考えていますので、ヘリコプターマネーはやめた方がいい。とも思います。
・若年世帯向けに新たな賃貸住宅制度を作る
⇒子育てにおいて、育児部屋、子供部屋を確保できるかは大きなポイント。もう一部屋あればもう一人育てられるかもしれないけれども、今の間取り、今の家賃ではとてももう一人育てる余裕はない。みたいな話はよく出ます。空き家住宅がこれだけ増えている世の中なので、国家主導で間取りの広い空き家住宅や相続時に現物納付された住宅などをプールし、低廉な価格で若年世帯に賃貸する(○年以上居住して、その住宅が気に入っている場合は原価で買い取ることも選択可能)。みたいな空き家対策も兼ねた施策は可能なのではないだろうか。
・保育園、小中高校の無償化
⇒国家として、将来を支えていく人財に必要最低限学んでほしいと思うラインまでの教育料は国家が負担する。それが戦後のまま中学校教育までで良いのか、高等学校教育までとするのかは、きちんと考える。
・年金制度を改良する
⇒つい100年前、国家が社会保障制度を整える前までは、子供を育てることは親にとって老後保障でもありました。その子供を徴兵制度や資本主義経済のための金の卵として親元から引き離し、核家族化を進めるために国家主導で社会保障制度が整えられたわけですが、国家が老後を保障してくれるのであれば、子供を育てるインセンティブが一気に減ります。しかし、国家が保障するとは言っても現在の日本の年金制度においては、高齢者の年金は現在の労働者が支えている。次世代の労働者を育成した高齢者と、育成しなかった高齢者に差をつけても良いのではないかと。例えば、子供を2人育てたら年金1割アップ、3人育てたら2割アップ、4人育てたら3割アップ・・・みたいな。何度も言いますが、次世代の労働者であり納税者であり年金を支えてくれる人財、つまり子供を育てには、家庭として多額の費用がかかります。その費用負担がどこかでは報われる仕組みづくりも必要だと思います。
・などなど
悩んでいるうちに、国家として社会資本を維持できる人口水準を割ってしまいます。
なるべく早く、何でもやってみるべきです。
若年人口が減ることのどこに問題があるか
ちなみに、私の大学1年生の時のレポート分析ですが、日本において災害の危険性の低い良好な居住エリア面積を抽出し、適正な密集度で住める人口を計算してみると約6000万人になりました。そこで、日本の人口は半分くらいになった方がいい!今後人口は減るので、これ以上のインフラ投資はいらない!という結論を書き、レポートとしては低い評価をもらったことを覚えています。
しかし今でも、急峻地のがけ崩れの事故や、河川氾濫で水没している住居等を見るたびに、「たぶん大学1年生の自分が計算した内容は『当たらずとも遠からず』だった」と思います。(2000年のレポートですので、我ながら先見の明があるような無いような・・・)
ただ社会人になってみて、社会インフラを維持管理する側の立場に立つと、人口が減るのは良いけれども、減るスピードがあまりにも早すぎると社会システムそのものが崩壊してしまう。
という危機感も覚えました。
社会をシュリンクさせていくことが望ましいにしても、人口減少のスピードとしては合計特殊出生率が1.6~1.8くらいで何世代もかけて人口を減らしていくべきだと考えるようになりました。
合計特殊出生率が1.3ということは、30年後の一世代後で単純計算で行けば世代人口が2/3になるということです。
60年後に二世代経つと4/9となり、半分以下に減ってしまいます。
このスピードで人口が減ると社会インフラを良好な状態で維持するのは難しいです。
(社会インフラの耐用年数は通常60年~70年程度)
現在計画する社会インフラは、その使命を終えるころには世代人口が4/9になっている・・・。これでは、社会インフラを更新ないし新築する意義を解くことが困難。(現在の老朽化したインフラを20年程度延命して、その後壊す・・・という判断しかできなくなる)
やはり、社会を良好に維持しながら、戦後に増えすぎた人口を適正な密度まで減らす取り組みは100年以上かけてゆっくりと進めるべきではないでしょうか。
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以上