まず、本ブログでモデルを用いて予測した1か月後の状況について、最終報告します。
以前のブログ、7月12日時点で予測した感染者等の予測値についてその後の推移を追いたいと思います。(直近の週の行動様式が継続された場合)
doubleincome-triplekids.hatenablog.com
①東京都の必要病床数は8月10日前後に2500床を超え、東京都としては緊急事態宣言に類する処置を検討しなければならなくなる。
8月 9日時点:1,601床
(7月12日時点: 580床)
予想は大きく外れました。入院・療養等調整中が1,110人まで膨れ上がっているので、その人数を足し合わせるとほぼぴったりなのですが、調整中の中の何人が有症者か分からず、結果としてモデルは当てはまりませんでした。
第2波モデルのパラメータ設定のブログでもご紹介した通り、第2波の退院に要する期間(13日)が、第1波(25日)から大幅に短縮されていることが、大きな要因です。
また、この後ご紹介しますが、今週の東京都の陽性者数は、モデル上は600人を超える計算になっていましたが、実績はピタッと陽性者数の増加が止まりました。それも入院数が増えなかった要因です。(注目すべきは、下記図のように接触歴等不明者数の増加が止まったことです)
良い方向にモデル計算がズレるのは喜ばしいことです。
②8月上旬には全国の新規PCR陽性者数7日中央移動平均が3000人を超える。
8月6日時点:1,380人
(7月9日時点: 310人)
※モデルを後方移動平均ではなく、中央移動平均で作ってしまっているため、3日遅れます
こちらも、先週まではほぼモデルで予測した通りに陽性者が増加していたのですが、今週に入り、対先週で微増(実行再生産数1.0に近づく)になりました。
モデル予測では、今週、1,800人程度まで増えている計算になっているので、こちらもかなりズレています。(今週は最大で2200名程度の新規PCR陽性者が出るのではないかと予測していました)
さて、今週は4月から計算し始めて以降、初めてモデルから観測値が大きく乖離し始めました。
モデルで拾えていない現象は何だろう?モデル屋としては、知的好奇心が湧き上がる瞬間です。
こういったものは、A.うまく観測が出来ていないか、B.モデルが間違っていて、事実が正しいか、どちらの可能性も疑わなければなりません。
今週に入ってからの観測条件の変更点
(A.うまく観測が出来ていない可能性)
詳しく都道府県別の増減数を見ていきますと、東京都と大阪府で対先週の増加が止まっており、それが主な原因です。
より詳しく見ると今週に入り東京都と大阪府では、PCR検査数が対先週で伸びなくなりました。
東京都で言うと、1日平均5,000人程度の検査で頭打ちになりました。
大阪府で言うと、1日平均2,100人程度の検査で頭打ちになっています。
先週まで、PCR検査人数の増加と陽性者数の増加がリンクしてたのですが、PCR検査の対応能力が今週は上限に達した模様です。
今後は、陽性化率の上昇のみでしかPCR陽性者は増えなくなりそうです。
より厳選した人(症状の出ている人)に対してPCR検査を行う必要があり、今後は第1波のように、重症化してしまう人の数が増えてしまうのではないかと懸念されます。
今週のモデル計算と観測値の差異に影響を及ぼしそうな事項
(B.モデルが間違っていて、事実が正しい可能性)
まず、今週の増減は、約1~2週間前の影響です。
ここで、市民の行動様式に影響を及ぼした事項はいくつかあります。
●を事態を悪化させる事項、○を事態を改善させる事項、に分けて書きます。
●GOTOトラベルキャンペーンが始まる(7月22日~)
○政府が、経済界に対して7割在宅勤務の徹底を呼び掛ける(7月27日~)
○東京都の小・中・高が夏休みに入る(8月1日~)
○東京都が飲食店の夜間営業を22時までとする要請を行う(8月3日~)
○大阪府が歓楽街への夜間営業時間の短縮を要請する(8月6日~)
これらの社会状況変化を定量的に数値化するため、NTTドコモグループが毎日発表してくれている午後3時の各地域の自粛率を4月から定点観測して増減を調べています。
東京では、最大のターミナル駅『新宿』(オフィスワーカーの行動増減の代表値)と、若者の街『渋谷』(観光やショッピング目的の若年層の行動増減の代表値)を代表地点に取っています。
大阪では『梅田』(オフィスワーカー)、『難波』(観光、ショッピング)を代表地点に取っています。
今までは、この代表地点でモデルが機能していたのですが、今回の東京、大阪の対処方法は『深酒』の規制です。
1次会が規制されていませんので、午後3時の行動様式はあまり変わらず、しかし、午後11時の行動様式には影響が出ている可能性があります。
次に、今回の経済界への7割在宅勤務要請は、体力のある企業ほど応答が早いです。
東京駅周辺、品川駅周辺などのオフィス賃料の高いエリアでは、好感度の応答を見せますが、新宿や池袋など、オフィス賃料の低いエリアの応答率は低くなります。
今回、政府の在宅要請に対して敏感に反応している東京駅側を代表値として拾っていないので、幾分、東京の指数に影響が出ている気はします。
さて、来週もお盆でそもそもPCR検査数が減ってしまいますので、再来週以降、どういった増減をするかをよく見て、モデルに新たなパラメータを加えることも検討する必要があるかもしれませんが、あんまりパラメータを多くしたくもないので、様子を見て検討します。
そもそも7割在宅勤務要請をすれば、第1波の時の感度で行けば、東京では増減0ラインまで行動自粛が広がる予定でした。政府が方針を示した7月27日以降、もっと行動自粛が進むのではないかと思っていました。
それが、今回はまったく反応しなかった(少なくとも定点観測を行っている新宿と渋谷では)ことに私自身は驚きを感じていました。
東京駅や品川駅を中心とした大手企業以外は、もう在宅勤務に戻るほどの余力が残っていないのだな。と。
国の要請があいまいなので、「GOTOトラベルとセットではやらないよ。」という企業もあったかもしれませんが。
まとめ
もし『深酒』を規制するだけで、ここまで大きな効果があるのであれば、『深酒』だけ1年間規制すれば、みんながある程度動き回っても良いことになります。
『新宿』や『渋谷』の数字には表れていないけれども、政府の7割在宅勤務要請が効果をあげているのであれば、それは続けましょう。
もし学校の休校がポイントだったら・・・・。世界で最も遅れているWEB環境での授業について、もっと積極的に考えなければなりませんね。
そして、今年の冬からずっと問題になっているPCR検査数のボトルネック問題。
これはいつまで解決せずに行く気でしょうかね。なぜ、他の先進国に比べて、検査能力が1ケタ低いままなのか。為政者はよく考えた方がいいです。
以上